福岡高等裁判所宮崎支部 昭和26年(う)70号 判決
所論関税法第八三条第一項に、いわゆる犯人の占有とある占有は、正権原に基く適法な占有の趣旨であること所論をまつまでもないところである。そこで、記録をしらべてみれば、所論機帆船第五直吉丸は、清家直吉の所有であるところ、被告人久木迫武夫に対し、同被告人が屋久島まで一航海するにつきその傭船期間も確定的に定めず、金三万円の傭船料をもつて賃貸したものであるが被告人等は、該船を本件密貿易に使用したかどで、原裁判所において沒収の言い渡しを受けたことが認められるところである。しかるに、被告人久木迫武夫の機帆船第五直吉丸の占有は前示のように正権原に基くものであるから、よしんば同被告人等において約旨に反し、同船を所論密貿易に使用したとしても、それは賃貸借契約の解除の事由となるかも知れないが、それをもつて、所論のように直ちに不法占有となる筋合のものであるということはできない。しかも、記録によれば、原判決言い渡し当時まで、機帆船第五直吉丸の賃貸借については、これが契約を解除した事実は全然認め得られないので、原判決が同船はなお被告人等が前示正権原に基き占有しているものと認め、所論関税法第八三条第一項を適用して、同船につき沒収の言い渡しをしたのは、前説示のとおりまことにその所であるといわざるを得ない。果して然りとすれば、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。